ドイツのDIYメーカー「ホルンバッハ」のCM騒動に見る「笑い」における文化的価値感の相違
ドイツのDIYメーカーであるホルンバッハのCMが話題になっている。DIYで汗を流しているおっさんのシャツを袋詰して、都会の女性が匂いを楽しむ。ベルトコンベアのシーンではご丁寧に日本語で「春の香り」と書いてある。
これがアジア人への人種差別にあたると、韓国のSNSで話題になり、CMの中止を求めて署名運動に発展しているとのこと。
ホルンバッハ側は、アジア人を差別するつもりは毛頭ないとのこと。その証拠として、日本人編だけでなく、ドイツ人女性のバージョンや、男性バージョンすらあると矢継ぎ早に反論した。
そもそもホルンバッハの広告戦略はシュールで滑稽なテイストに溢れている。
今回問題になったCM以外でも、ペンキの色が混ざる様を、腹の出た中年のおっさんが風船を持って飛び跳ねる様にみたてたり、庭で泥だらけになって木の根を抜くさまを、腹の出たおっさんが山から飛び降りて土や砂にまみれる様にみたてたりと、DIYの楽しさや喜びを独自のシュールな世界観で表現している。
公式Webページからしてトップページで植木や芝生に顔を突き刺した画像である。恐らく「自然を感じよう」ということなのだろう。いわゆるぶっ飛んだインパクトある広告戦略だ。
その流れを踏襲すれば、問題のCMもアジア人差別ではないことがわかるはずだ。これが問題ならペンキに模した風船を持ったおっさん達についても、おっさん差別で、庭に突き刺さった人物も全て差別になる。
そもそもシュールや滑稽といった類の笑いには、人を馬鹿にしたり揶揄するものが多い。
例えばサーカスのピエロは「失敗を強調する」する。いわゆる道化を演じる。客も本当はピエロ役が難しいことを理解しつつ、おどけたさまを楽しむ。
人間離れした技を華麗に成功させるというサーカスの前提があってこそ、道化との対比が際立つ。
しかしサーカスの人間離れした技が繰り返されれば、それはただの日常になり、観衆も拍手を送らなくなる。それは道化も同じで、失敗がステレオタイプ化すれば、客には飽きられる。エンターテイメントは陳腐化と斬新さのせめぎ合いと言える。
といって、あまりにも斬新すぎれば笑いは生まれない。誰しもが理解できる共感があってこそ、それを切り崩す面白さが生まれるからだ。
そうして生まれるのが、コンプレックスを利用した笑いだ。
デブなのに動ける、ハゲなのに隠さず前向き、ブサイクなのにカッコつける、気持ち悪さを強調するべく変な動きと組み合わせる。
そうした人間的でわかりやすい図式が茶の間では好まれる。もちろん本当に馬鹿にしているわけではない。ピエロの高度な技術を尊敬しているように、いかに常識を壊してくれるかを楽しんでいる。
つまりコンプレックスはわかりやすさのためのただのお膳立てでしかない。対象への侮蔑でも無ければ差別でもない。その証拠に笑い芸人はさまざまなイベントで多くの客を集める。なにより好感度が重要なテレビ業界で引っ張りだこだ。いわゆる「芸」による笑いは、芸人にとってステータスであるからだ。
そして今回のホルンバッハのCMについて詳しく見ていこう。
ドイツでは恒例である春の大掃除。普段DIYに慣れ親しんでいない人でも自然と触れ合う好機。一日中作業をすれば泥だらけで汗もかく。つまり、DIYを愛する者にとって汗と泥の匂いは春の香りだ。という論法だ。
普通であれば汗や泥の匂いはネガティブな要素だが、あえてそこに注目することがホルンバッハ風のユーモアということだろう。
しかしホルンバッハでは既におっさんが泥だらけになるCMは放映済みだ。陳腐化して何のインパクトもなくなったCMに価値はない。もっと飛び抜けたインパクトを、脱ホルンバッハ風をと考えて出たのが「そうだ、本来であれば汗と泥の匂いと縁遠い人が匂いを楽しむというのはどうだろう」という発想。
そこで出てきた汗の匂いと正反対のアイコンが「清潔好きの日本人。さらに清潔感を愛していそうな大都会で働く女性」だった。
組み合わせてできたのが、野良仕事をしたおっさんの下着の匂いをアジアの女性が楽しむ図だ。そう、それこそが春の香り。DIYに慣れ親しんでない人も春の大掃除で春を感じようよ。必要なDIYグッツはもちろんホルンバッハでね。という流れだ。
ここまで理解すれば、ホルンバッハが差別的だという主張がいかに的外れかわかるだろう。そう、理解できればという前提付きだ。
このCMが成り立つ前提は「ホルンバッハのCMはシュールで前衛的」という理解がかかせない。またドイツにおいて春の大掃除はDIYメーカーにとって初心者獲得の機会といった、文化に対する理解も必要となる。ドイツで作られた、ドイツ人向けのCMだからこそ成り立つ要件と言える。
そもそも欧米におけるCMは我々の感覚とはかなり異なる。CMにおける最高の権威と言われるカンヌ映画祭のCM部門。かつて賞を取った冷凍食品のCMにこんなものがある。
ベットで抱き合う男女、行為が終わり満足そうにベットに倒れ込む。女性がおもむろに立ち上がり温めていた冷凍食品をレンジから取り出す。テロップで「3分で本格的な料理」。女性が冷凍食品を口に運ぶと男のいびき超えが聞こえてきて、女性が呆れ顔で首を振る。
短時間で終わる味気ない行為と、お手軽で美味しい冷凍食品を対比させた面白いCMとして賞を受賞した。
早漏で悩んでいる男性や、淡白な行為に悩んでいる女性には手厳しいCMといえる。女性を肉欲の塊として描いていると反論するフェミニストもいるかも知れない。はたまた性の乱れを指摘する人もいるだろう。しかし欧米には多少の皮肉を許す寛容さがある。
そのような前提を一切理解していないアジア圏の人間が見ればCMの意図は理解できないだろう。すると「アジア人をバカにしてる。アジア人女性を性的異常者に仕立てて差別してる」と、とんでもない勘違いが生まれる。
こうした文化の違いを理解していないことによる、お笑いへのトンチンカンな勘違いはよく起こる。日本でも音楽番組で浜ちゃんが韓国アーティストにツッコミを入れたことに対して「非礼だ、暴力だ」と韓国で騒動となったこともあった。最近でもガキの使いで浜ちゃんがエディーマーフィーに扮した際、顔を黒塗りしたことが黒人差別だと海外から指摘された。
ではコントで白人に扮するときに白塗りしたら?付け鼻をしたら?金髪のかつらを被ったら?特殊メイクをしたら?インド人役にターバンをかぶせたら?日本人役にカメラをもたせたら?韓国人役にキムチを食べさせたら?ロジア人にコサックダンスを踊らせたら?全て差別にあたるだろうか?
立場や前提を知らず、社会的・文化的な理解もない、放送の対象ではない地域の人にまで配慮する必要があるだろうか?
相撲の中継に「裸同然の男性がぶつかり合う競技です。厳格なカトリックの方には不適切な内容となります」などとテロップを入れて放送するべきか。日本でのアルコールのCMに「イスラム圏の方は公共の場での飲酒は禁止されております」と、ことわりを入れるべきだろうか。当然そんな必要はない。
全世界共通の社会性や倫理観が存在しない以上、配慮には限界がある。特に「お笑い」という「背景のわかりやすさ」が求められる分野では、それが顕著だ。
今回の問題は韓国のSNSから火がついたそうだが、自国の性差別については目をつぶる癖に、他国に口出しするのはお門違いというものだ。そんな暇があるなら自国にはびこる女性への差別を是正してはどうか。韓国人売春婦の輸出が世界中で問題になっているが、そうした問題の後ろめたさから、余計に騒ぎ立てているのではないかと、勘ぐりたくなる。
ドイツ企業のアジア人女性差別的なCMに声を上げないどころか、抗議をする韓国を揶揄する人々の愚かさ | ハーバービ...
引用の本文:ドイツのDIYメーカーであるホルンバッハのCMが、アジア人女性への差別だとして批判に晒されている。CMでは、野良仕事をする中年のドイツ人男性が脱いだ下着がパッキングされ、自動販売機で販売される。それ…
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コメント
ID:1
名前:匿名
投稿日時:2019-04-29 20:00:12
シュールとか、お笑いとかいう以前に、生理的に受け付けない。
これがCMでなく、XVideosだったらどうでもいいけど。
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ID:2
名前:匿名
投稿日時:2019-05-02 06:18:32
コンプレックス=お膳立てと、ドイツでマイノリティであるアジア人を比べても何の意味も無いと思うのですが。。。 このCMの放送開始から白人男性によるアジア人女性への侮辱的行為が増えてるので、このCMは差別や侮辱行為を助長しているのが事実です。 マイノリティをお笑いのネタに使った結果です。 この記事を書いた方は、海外に住んだ事があるのでしょうか。
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